犬のシニア期に入ると、「どれくらい運動させていいのか」「興奮させて大丈夫なのか」と悩む場面が増えてきます。
特に、楽しそうに喜んでいる姿を見ると嬉しい反面、「心臓に負担がかかっていないかな?」と不安になることもありますよね。
よく「動物の一生で心臓が打てる回数は決まっている」という説があります。科学的に明確な根拠があるわけではありませんが、心拍が長時間上がり続ける状態は確かに身体への負担が大きいと考えられています。
しかし一方で、シニア犬にとって適度な刺激は認知症予防や生活の質を保つためにも必要とされています。
では、「興奮は悪いのか?」「刺激は与えた方が良いのか?」
この相反するように見える両方を、どうバランスを取っていけばいいのでしょうか。
この記事では、シニア犬にとっての「良い興奮」と「負担になる興奮」の違いを解説しながら、我が家の13歳組のまろとごろうの実例も交えて考えていきます。
我が家の13歳コンビが見せる“嬉しすぎる興奮”
我が家の13歳コンビ、まろとごろうは、とにかく散歩が大好きです。
歳を重ねてもその情熱はまったく衰えず、散歩の準備を始めた瞬間からしっぽを振りまくり、体を左右に揺らし、声が出てしまうほどの“嬉しすぎる興奮状態”に入ります。
玄関に向かう足取りはまるで子犬のようで、見ているこちらもつい笑顔になってしまいます。
一方で、そんな姿を見る度に私の頭をよぎるのが、先ほどの
「動物の生涯の鼓動回数は決まっている」という説。
適度な興奮を抑えてあげたいと思うのですが、
“好きなことへの興奮”は本当にコントロールが難しいのです。
特に散歩のように、犬にとって「最高の楽しみ」になっている行動は、無理に抑えれば逆にストレスになってしまいます。
この葛藤は、多くのシニア犬の飼い主さんが感じるところではないでしょうか。

シニア犬が興奮すると起こりやすい負担
シニア期に入ると、体力や臓器機能が若い頃より確実に低下していきます。
そのため、同じ“興奮”でも身体にかかる負担は大きくなりやすいと言えます。
● 心拍数が一気に上がりやすい
高齢になると心臓の働きが弱くなり、心拍数の上昇に身体がついていけないことがあります。
動悸、息切れ、ゼーゼーとした呼吸が長く続く場合は要注意です。
● 呼吸器への負担
気管が弱い子は興奮時に咳が増えることも。
まろも歳を重ねてから咳が出やすくなり、興奮時に「コホッ」と出ることがあります。
● 足腰のリスク
興奮して急に走ったり、方向転換をすると転倒の危険が増えます。
特に後肢が弱ってくる時期は、嬉しさのあまり滑ってしまうことも。
● 長引く興奮は疲労に直結
シニア犬は興奮状態から落ち着くのに時間がかかります。
散歩前から興奮→散歩中も興奮、となると体力の消耗が大きくなります。
一方で、刺激が少なすぎるのも良くない
興奮ばかりが悪いのではなく、“刺激ゼロ”の生活もシニア犬には大きなリスクです。
● 認知症リスクの上昇
刺激が少ない生活は脳への働きかけが減り、認知症の症状が進みやすいと言われています。
散歩・嗅覚刺激・人との交流は「脳トレ」のような役割を持ちます。
● 活動意欲の低下
歩かない生活が続くと筋肉が落ち、ますます動く気力が減ってしまいます。
結果として寝たきりリスクも高くなります。
● メンタルの低下
犬にも「生活の楽しみ」が必要です。
すべてを抑えてしまうと、表情が暗くなり、無気力に見えることもあります。
良い興奮と悪い興奮の違い
大切なのは、興奮そのものをやめさせるのではなく、
「良い興奮(健康につながる刺激)」と「悪い興奮(負担の大きい刺激)」を見極めること。
● 良い興奮の例
- 散歩前のワクワク
- 大好きな人に会った時の喜び
- おやつを待つときの期待感
- 軽い遊びや声かけでの反応
- 新しい匂いを嗅ぐ刺激
これらは短時間で落ち着きやすく、適度な刺激として健康にプラスになります。
● 悪い興奮の例
- 来客に吠え続ける
- 雷・花火のパニック
- 長時間のハァハァが続く
- 攻撃・恐怖・競争による緊張状態
- 無理な運動負荷
こうした興奮は身体へのストレスが大きく、避けたい刺激です。
シニア犬にとって“ちょうどいい刺激”の与え方
● 散歩は「時間」より「質」を重視
長く歩くより、
ゆっくり・自由に匂いを嗅ぎ・好きなペースで歩くことが大切。
● 興奮しすぎる前に小休憩
まろやごろうのように散歩前から大興奮の子は、
玄関に行く前に軽く撫でる・呼吸を整える時間を作るのも有効です。
● 刺激は“ゆるやか”に増やす
新しい場所や刺激の強すぎる公園より、
いつもの道をゆっくり歩く方が安心して楽しめます。
● 飼い主さんの穏やかな声かけは最高の刺激
シニアになるほど、飼い主さんの声・存在が大きな安心と刺激になります。
コントロールしきれない「大好き」の気持ちも大切に
我が家のまろとごろうのように、
「散歩が好きすぎて興奮しちゃう」
というタイプのシニア犬は珍しくありません。
大切なのは、
・その興奮が“嬉しい”興奮か
・長時間続いていないか
・興奮後に無理が出ていないか
を観察しながら、
完全に抑え込むのではなく、できる範囲で負担を軽減してあげること。
好きなことがあるというのは、
シニア犬にとっても“生きる力”になります。
まとめ:興奮をゼロにしなくていい。大切なのはバランス。
興奮=悪い
という考えは一面しか見ていません。
✧ 過度な興奮 → 身体に負担
✧ 適度な刺激 → 脳と心に良い影響
✧ 好きなことへの喜び → 生活の質を支える大事な要素
シニア犬に必要なのは、
“過度な興奮を避けつつ、好きなことはできる形で続ける”というバランスです。
まろとごろうの「散歩大好き」の気持ちを大切にしつつ、
無理のないペースで楽しませてあげること。
それがシニア犬と穏やかに暮らす上での、一番のポイントなのかもしれません。


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